相続登記したら、不動産屋さんが訪ねてくる…そのからくりを知った

突然の訪問

ある日、私を家に訪ねてくる人がいた。

相続した実家を売って欲しいという

不動産業者さん。

家まで訪ねてくるとは…

確かに、今回の相続登記で知ったことだが、

「登記事項証明書」をとれば、

彼らが欲しい物件の所有者が住所氏名でわかる。

恐ろしいことだ。

せっかく大阪から訪ねてきたというので、話だけは聞いた。

近隣の物件も購入し、大きな敷地にしてマンションを建てるらしい。

実家は立地のいい場所にあるので、「(マンションは)いくらでも売れる」そうだ。

ちなみに、おいくらで買うつもりですか?と聞くと、

「億はいきます」と。

へえ、でもねー、そんな旨い話、易々と信じていいのかしら?

不動産登記受付帳

相続登記をすると、とにかく不動産屋からのDMが増える。

他にも届いていたのだけれど、「どこで調べるのかなあ」と疑問に思っていたら、

誰でも閲覧できる「不動産登記受付帳」というのがあるらしい。

受付帳とは不動産登記規則に基づき、全法務局で備えている資料。

日付順に「所有権移転相続」など変更理由と該当の土地・建物の住所が記されている。

法務局内で、登記内容の確認などに使うもの。

これが、誰にでも閲覧できる。

こういった情報を不動産屋さんは定期的に手に入れているのだろう。

個人情報って、政府の方針で「ダダ漏れ」なのね。

なので、相続登記とかしたら、いい物件の場合はDMがどんどん送られてくる、という仕組み。

相談しよう、そうしよう

わざわざ家を訪ねてくるというのは、「本気なのかなあ」と思い、

さらに「土地活用」とか、「開発」とかの邪魔になっているのでは、と不安が高まってきた。

不動産は、金額も大きく、かつては地上げやとかが暗躍して

「火をつけられたり」、「嫌がらせをされたり」と、いろいろあったことは

記憶に残っている。今は店子さんもいて、その方々に迷惑がかかっては、とそういったことも

心配になる。

そうこうしているうちに、再び同じ不動産屋さんが家を訪問。

私は留守だったので家族が怖がって私に連絡してきた。

身バレしている上に何度も訪ねられては困る。

仕方なく、こちらから電話した。

そうすると、実家の「隣家が売却すると言う返事をした」という情報が

提供された。「これはいよいよ本気なんだ」とますます不安になる。

そこで、

まずは、信頼できる友人であり、実家の管理をお任せしている I 氏に、

そしてやはり信頼できる高校の後輩でもある弁護士さんにも相談することにした。

(「億」のお金に目が眩んではいけないのだ。)

ご近所に聞き込み

まずは、I氏と相談。

そして、「売る」という返事をした隣家に状況を聞いてみよう、という

ことになった。その方は、K氏といい、まあ、いわば幼馴染でもある。

彼の方がかなり年上であるが。

聞くと、相場の1.4倍ぐらいの値段で買ってくれるという。

彼は、もともとなかなかのやり手で、当家の隣家の他にも近隣に100坪の土地家屋が

あるらしい。ただ、そちらの事業が難しい局面にあること、

加齢により、もう「夢も希望もないしなぁ」と(最近、入院したらしい)

厭世的になっている。しかも、会社の借金がまだ残っていてそれをきれいにしたい、

そういった事情があるようだ。

もうすぐ契約をする、と言う話だったが、さらに聞いてみる。

「手付はどれぐらいもらうんですか」と聞くと、

「そんな話はなかったなあ」とのこと。

そして、さらに聞いてみると

「なんか、一括で払ってくれるみたいやで」

うーん、それもどうなんだろ。

I氏と私は、その「相場の1.4倍」の値段というのは、

私の持分、そして近隣一帯をすべて押さえた時の金額ではないか?と

いう疑問が湧いてきた。

M氏は、皮算用をしているようだが、他のところが買収に応じなかったら

もしかしたら「その話はなかったこと」になる、という

「条件付き」の契約ではないだろうか?

契約には十分気をつけて、とお礼をいいつつ、少し心配な気がしてK氏の事務所を辞去した。

一区画全部、あるいは半分ずつ?

今回の M社の「開発計画」は、実家を含む大きな区画だが、

「こんなふうに言ってきているのだから、反対側(北側)の区画にも

声をかけているのではないだろうか?とI氏と思い及んだ。

そこで、区画の北側半分の家を所有しているT氏にも話を聞いてみることに

した。

そうすると、やはり同じM社が買収話をもちかけていて、

すでに数軒は契約に至るようになっているという。

T氏、そしてその隣のC氏も売却する気はなく

「書類は一部取ってあるけど、だいたいシュレッダー行きや」と

言っていた。

M社は、実家を含む大きなブロックの全部を確保するつもりで

東京支社は北側半分、大阪本社は、南側半分を担当しているらしい。

しかし、M社は自社でマンションを建てるのではなく、

土地を確保し、他のデベロッパー(例えば三井不動産のような大きなところ)に

建てさせるらしい(と言っていた)。

うん、やはり地上げだけが目的の会社なのね。

I氏と「いやー、いろいろ勉強になりましたね」と言って

打ち合わせを終え、その後、信頼するS弁護士を訪ねる。

「免許とったばっかりのまだ実績のない会社に売るのはやめたほうがいい」ときっぱり。

確かに、今いる店子さんに退去してもらったり、営業保証金などを

払ったりしていたら(結局、M社は「経費がかかったから」と言う理由で

売却代金から差し引く気がする)、大変なことになるし、しかも譲渡税が

かなり大きい。たとえ1億で売れても、2千万税金にもっていかれるよ、

とS弁護士はいう。

私の手元には半分も残らない可能性がある。

両親が骨身を削って守ってきた家、ちょっと今回の話には乗れない、

それにしてもいろいろ学ぶことがあった、という一件だった。

NHKでこんな特集もありました。

クローズアップ現代

追跡!令和の“地上げ”の実態 不動産高騰の裏で何が

 

 

 

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この記事を書いた人

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大野 清美

1958年大阪生まれ、大阪育ち。子どもの頃の夢だった「留学したい」を37歳で実現。3児を育てながら米国NY州コロンビア大学国際関係学大学院を卒業しました。帰国後は英語を使って仕事を続け、今後は「自分の人生を変えてきた」英語を教えたい!と修行中です。
趣味はマラソンとモーターバイクでのツーリング(愛車Honda VTR)です。
(2019年4月記)