ブックレビュー 「腸科学」by ジャスティン・ソネンバーグ、エリカ・ソネンバーグ

長年便秘で悩んだ私にとって

腸の健康に関する情報はとても関心があります。

本屋さんでこのタイトルを見て是非読みたいと購入しました。

「腸は第2の脳である」とか、「腸は考える」とか、そんな言葉もよく聞きます。

この本にその言葉への「答え」は書いてあるのか、楽しみに読み進めました。

1. 本書の主張

健康のためには、とにかく「腸内細菌叢を育てよう」(マイクロバイオータ)と

いうことが何度も繰り返されています。

人体のあらゆる表面、間隙、穴には微生物がびっしり生息しているとはいえ、大多数は大腸内にいる…これらの細菌をきちんとやしない、私たちの身体が必要とする化合物がきちんと産生できるようにすることが、健康維持のためにできる最も重要な選択なのだ。(12ページ)

では、その「腸内細菌叢とは」何か?

「どうやったら育てられるか」

を読み解いていきましょう。

2. 腸内細菌叢(マイクロバイオータ)とは?

「人間は細菌の詰まった1本の管」=

人体は口から始まって肛門で終わるとても複雑な管である(24ページ)。

と、あります。そう、複雑とはいえ、単なる「管」何ですよね。

食物は、食道から胃に下りて…約50時間かかるこの旅程の最終停車地が大腸で、

ここでは食物はごくゆっくりと先へ進む…

大腸の内表面はねばねばした粘液層に覆われている。

ここで私たちが食べたものの残りかすが、

マイクロバイオータと呼ばれる

「腹を空かせた高密度の微生物集団に初めて出会う」(25ページ)

そして、このマイクロバイオータは、私たちが必要とするものなので

これらの細菌と「互いに利益を得られる共生関係を結んだ」のです。

細菌は、腸内で発酵し、その結果、私たちはカロリーを食物から得られる。

また、マイクロバイオータは、免疫系を調整し、

病原菌を寄せ付けず、代謝を統括するのです。

そして、その研究が進むにつれ、マイクロバイオータは「肥満」と関係があり、

さらに、クローン病、代謝異常、大腸癌、

自閉症などにも関係している、ということが

わかってきたのです。

こうなれば、「健康なマイクロバイオータを育てること」が

人間の健康にとっていかに重要なことかわかってきますよね。

3. マイクロバイオータの育て方

筆者は、母乳育児の重要性をかなり熱心に説いています。

母乳は、どれほど少量でも赤ちゃんにヒトミルクオリゴ糖と、

ほかでは補えない微生物を与えてくれる(259ページ)からです。

また、食べ物では、ケフィアという乳酸菌の摂取を推奨しています。

その他にも本書には筆者夫婦のマイクロバイオータを増やすメニューが

参考に載っていますが、正直、日本ではあまり馴染みがない食材も多く、

部分的に真似るぐらいになるでしょう。

また、摂取する細菌の多様性が重要であり、その根拠として、

「農場で育てられた児童が喘息やアレルギーにかかりにくいのは、

環境中の微生物との出会いが多いからだろう」とし、

  • ガーデニングで土に触れる
  • 窓際でハーブを育てる
  • ペットのいる家庭で育った子供は呼吸器感染症やアレルギーから守られ、ペットのいない家庭の子どもより抗生物質を必要とする機会が少な

と書いています。

4. 清潔すぎるのはよくない

一方、筆者は、抗生物質の多用や、

清潔過ぎる社会に警鐘を鳴らしています。

なので、きちんと手を洗わないリスクより、

多様な微生物に出会う利益の方が大きい、とまで言っています。

特に抗生物質については、「人体に常在する善玉菌を死滅させ、

結果的に私たちの健康に害をなす」と言います。

大多数の抗生物質は経口投与される。一見するとこれは当たり前のようにも思える。…だが、医薬品をこうして身体全体に循環させれば、体内にいる細菌すべてが攻撃の対象になる。

なので、せっかく健康時には「健康なマイクロバイオータ」を育てていても、一旦

何らかの細菌に感染し、抗生物質を使うと、

元のマイクロバイオータに戻すのは大変時間がかかるそうです。

5. 脳との関係

・ヒトの脳と腸は大規模なニューロン網と化学物質と

ホルモンの連絡路とでつながっている。(172ページ)

と紹介し、

これらの細菌は私たちの世界観のみならず行動まで変えるという。…たとえば、腸内マイクロバイオータは、幸福感を調整する強力な神経伝達物質であるセロトニンの体内濃度に影響を与える。(174ページ)

脳と、マイクロバイオータにもかなり密接な関係があり、

これから解明されていくのではないかと言っています。

6. まとめ

腸の研究、すなわちマイクロバイオータの研究が進むと、

マイクロバイオータの乱れが人体の健康に及ぼす影響も次第に

明らかになり、

例えば、「がん治療への光明」も見えてくるかもしれない、

と筆者は言っています。

腸の健康、超、大事です(あ、駄洒落…)

 とにかく、読み応えあり、の面白い本です。

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この記事を書いた人

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大野 清美

1958年大阪生まれ、大阪育ち。子どもの頃の夢だった「留学したい」を37歳で実現。3児を育てながら米国NY州コロンビア大学国際関係学大学院を卒業しました。帰国後は英語を使って仕事を続け、今後は「自分の人生を変えてきた」英語を教えたい!と修行中です。
趣味はマラソンとモーターバイクでのツーリング(愛車Honda VTR)です。
(2019年4月記)