ブックレビュー 幕内秀夫 「日本人のための病気にならない食べ方」

いや、もうホントに糖質制限がいいとか、マクロビオティックがいいとか、ベジタリアンがいいとか、わからなくなっています!!

答えを求めて買った本ですが、本書全体に流れるトーンは、日本の食を今のようにした栄養教育や食べ物を工業製品化してしまった食品産業への「怒り」と感じました。

第1章 栄養学は矛盾だらけ

著者(幕内さん、と呼ばせていただきます)は、まず、「欧米から栄養学が入って来たせいで「栄養素主義」が蔓延した」と、現代の日本の栄養学の潮流を批判します。

栄養素主義とは、「栄養素を前提にして食生活を考えることが科学的である」という考え方です。

たとえば、栄養素から見て問題ない、ということから出てきたある病院食が「カロリーメイトの卵とじ」だった、というある病院での「本当の話」が紹介されました。

うーん、これ、どんな味でしょうか?自分だったら一気に食欲を無くしそうな気がします。

また、食べることの一番大切な意味はカロリーを摂って活動や成長に使うことなのに、カロリーゼロのコーラがバカ売れする現状も憤ります。

ハンバーガーなどと一緒に食べるときに「脂肪の吸収抑えるため」というのが大義名分だそうです。

確かに、私の友人はコーラ大好き。「カロリーゼロだから飲んでもいい」と言いますが、そもそもそれ、必要でしょうか?

また、ある学校の給食メニューでは、こんなのもあったとか「ジャージャー麺、フライドポテト、サイダーポンチ、牛乳

栄養士さんは、これで「ちゃんと栄養バランスを考えてある」といったそうです。「サイダーポンチ」って何?

また、水を販売するときに、「ノーカロリー、ノーアルコール、ノーカフェイン」と表示して販売したらバカ売れしたという現象も。

現代の日本人は、理想の食事像がないまま、特定の栄養素に注目が集まるとそればかりをとろうとする「情報過多」に踊らされている、と嘆いています。

では、何を食べればいいか?ー日本の風土に根ざしたフード、米と味噌汁を中心とした定食が一番いい、とここでまず著者は力説します。

第2章 栄養学が見落としてきた腸内細菌の不思議

難病を治療する画期的な治療法、糞便移植法という治療法があります。

その治療法とは、「良質の便を生理食塩水に溶かして濾過し、その液体を内視鏡などを通して患者さんの腸へ流していく治療法です。

つまり、良質な腸内細菌を患者さんの腸に届ける治療法なのです。

幕内さんは、この腸内細菌の役割を重視しています。

そこで、例えば、肉食の害は実は「肉そのものよりも生育に使われている抗生物質」にあるのではないか、と言っています。

一方で、腸内細菌を増やすためにヨーグルトを毎日食べることにはあまり意味がないのではないか、と疑問を投げかけています。というのは、

「赤ちゃんが生まれて、足や手に菌がついていくことで」(特に出産の時)、その人の一生の健康の土台となる腸内細菌叢が作られる」ためで、「毎日のように摂らないと繁殖しないような菌は、本当は「繁殖しないもの」ではないか、と思われるからです。

また、「腸内細菌の働きで作られる栄養素がある」との説も紹介し、「食べ物の栄養素計算はあまり意味がない」と断じているのです。

第3章 栄養学は欧米崇拝から成り立っている

この章では、明治維新の影響で一気に入ってきた欧米の栄養学、また、アメリカで小麦が余剰生産され、そのさばき先としてターゲットになったのが日本、

という敗戦の結果であるパン食の普及など、欧米の食生活への憧れと崇拝が、もともと優れていた日本の食生活を乱した、と主張します。

そして、「気候風土や民族の違いを考慮せず、欧米型の食生活を理想であるとする栄養教育が行われてきた」のです。

そして「ご飯を食べるとバカになるという誤った考え方が蔓延」しました。

第4章 栄養学は食の工業化をもたらした

たとえばご飯と味噌汁を主体とする日本の朝食は、原材料の形が残っています。

しかし、たとえば欧米型のホテルで食べるパン、ソーセージ、スクランブルエッグ、マカロニなどの食材はすでに原材料の形がわかりません。

そのパンでも、「調理パンの原材料表示の品目の多さに驚愕」するほどです。

私もコンビニのサンドイッチを見ると「これ、大丈夫だろうか?」と思ってしまいます。

食べ物が、原材料の形をとどめていない、つまり

「工業化によって食べ物が食べ物と言えない何かに変わってしまった」のです。

そこで、幕内さんは、食の工業化の3つの問題点(105ページ)を掲げます。

  1. マヨケソが増える(マヨケソとは、マヨネーズ、ケチャップ、ソースのこと。砂糖がたくさん入っている)
  2. 清涼飲料水が増える
  3. おかずの選択肢が減る

要するに油と砂糖の摂取が増えることを問題視しています。

「工業製品」というのは納得がいきますね。例えば母が「お土産に持って帰れ」と押し付けたハムですが(私は最近では加工食品はほとんど買わないので)

説明書きを見ると驚きます。

↓なんか、「ハム」に「糖質ゼロ」っておかしくないですか?

いやー、たくさん色々なものが入っていますねー。

第5章 食のドラッグ化はどこまで進むのか?

さて、油と砂糖を使った食品は何が問題かというと

依存症を生み出すことが問題です。すぐに快楽中枢が刺激されるのです。

砂糖や油は「マイルドドラッグ」と言えるほど、依存症を引き起こす、と筆者は警告します。

その結果、肥満、糖尿病が蔓延している。

たとえば、ポテチ。

マイルドだからといって安心できない。手軽に食べられ、罰せられることがない。大人も子供も自由に口にすることができる。

こう言ったことから、この食品は、「史上最強、最凶」の食べ物である、と断じています。

とりわけ日本は、国を挙げて栄養改善運動を行い、

ご飯を減らし、

輸入小麦粉をふやし、

何世代にもわたってつづけてきた食生活を根こそぎ変えてしまった(148ページ)と嘆くのです。

第6章 6つのポイントから栄養学を破壊する

「食べているのに病気になる、体調が悪いのは摂取する栄養がまちがっている」と幕内さんは言います。

そして病気の原因は、

  • 微量栄養素が不足している
  • 腸内環境がととのっていない
  • 食べ過ぎと運動不足
  • 添加物、抗生物質を取りすぎている
  • 柔らかいものばかり食べている

と言います。

そして、食の「工業製品」を減らしていけば、結局「ご飯と味噌汁」に落ち着くのです。

幕内さんの提言はシンプルです。

  • 精製食品を減らす
  • 穀類、芋類の食物繊維で腸内環境を改善する
  • 清涼飲料水、アイスクリームも要注意
  • 肉類の添加物や抗生物質に注意
  • 安全な食品にこだわりすぎない
  • 噛まないでも食べられる食品を取りすぎない

などの注意点を気にかければいい、ということになります。

第7章 「風土」と「感覚」に根ざした新しい栄養学

結局、本書では「その土地にあるものをいただく」という基本に帰ります。

したがって、本書ではわざわざ「「日本人のための」病気にならない食べ方」というタイトルになっているのです。

10個の注意が書かれているので、転記します。

  1. ごはんをきちんとたべる
  2. カタカナ主食を常食しない
  3. 発酵食品を常食する
  4. 常備食を常食する
  5. 甘いもののとり方を工夫する
  6. 季節の野菜料理を副食にする
  7. 動物性食品は魚介類を中心にする
  8. 未精製のコメを取る機会を増やす
  9. 食品の安全性にも配慮する
  10. 食事はゆっくりとる。

まとめ

冒頭で書いたように、幕内さんは、この本を「現状の日本人の食生活に対する怒りを込めて

一気に書き下ろしたんだろうなあ、と感じました。

ご飯と味噌汁生活は、乳がんの手術後の抗がん剤治療で苦しんだ私が行き着いた「石原結實」先生の

サナトリウムでの食生活でも実践されていて(基本はジュース断食ですが、補食になるとご飯、味噌汁、そしておかずになります)、

私の普段の生活もだいたい和食、あるいは野菜中心食です。

しかし、これまでほとんど大病を経験したことがない(ありがたいことですが)家族、とくに夫が「マヨケソ」好きなのが気になっており、さて、今後どのように夫を健康食に導いていくか、課題も見えてきました。

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この記事を書いた人

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大野 清美

1958年大阪生まれ、大阪育ち。子どもの頃の夢だった「留学したい」を37歳で実現。3児を育てながら米国NY州コロンビア大学国際関係学大学院を卒業しました。帰国後は英語を使って仕事を続け、今後は「自分の人生を変えてきた」英語を教えたい!と修行中です。
趣味はマラソンとモーターバイクでのツーリング(愛車Honda VTR)です。
(2019年4月記)