バイロン・ケイティ「ザ・ワーク」人生を変える4つの質問 ブックレビュー

この本ほど書評を書くのが難しい本はなかったです。

本に書かれているワークをやったとしたら、

それによって「あぶり出されるであろう」丸裸の私の「真実」と「現実」の姿が

あまりに醜いのではないかと怖かったからです。

1. 「ザ・ワーク」のワークとは?

私は様々なセミナーやワークショップに参加します。

学ぶことは好きですが、勉強会の中に「ワーク」の時間があると、

とても戸惑います。

「これまで気づかなかった自分を発見しよう!」

というタイプのワークが多いですが、

私には怖くてたまりません。

ひた隠しにしている「醜い私」が明らかにされたらどうしようか、

と心配でたまらなくなるからです。

 

しかし、本書、「ザ・ワーク」の4つの問いかけは、

最終的に私を「安心」の場に導きました。

「今まで知らなかった自分」ではなく、

「知っているはず」の自分に立ち返ることができたからです。

その4つの質問とは…

  1. 「それは本当でしょうか?」
  2. 「その考えが本当であると、絶対言い切れますか?」
  3. 「そう考えるとき、(あなたは)どのように反応しますか?
  4. その考えがなければ(あなたは)どうなりますか?

これだけです。

こんなシンプルな質問で「私の何がわかる」というのでしょう?

しかし、様々な事例を読み進めていくと、

ケイティのこの4つの質問に答えて彼女と問答を進めていくだけで

「相談者」は、

現実は自分の考えよりも優しく、

相談者を苦しめているのは「起きていることに対する考え」なのだ

ということがわかってくるのです。

これは、すごい発見です。

自分の「考え」が自分を苦しめるなんて!!

2. 私の事例を考えてみた

たとえば(自分のことではないですが)私の母は、

「あの店子さんが家賃を払ってくれないから

私は体を壊してしまった」とよくいいます。

母は「あの人がお金を払わない私を馬鹿にしている(から払わない)」と

考え」、

悔しくて不眠になったり、そのほかのストレスをまぜこぜにして

病気」になったという「ストーリー」を作ってしまうのです。

現実は、店子さんは商売がうまくいかず、お金を払わないのではなく、

「払えない」のです。

そこには、店子さんがあえて母に悪意をもつストーリーはありません。

母がすべきことは、感情を交えず、払ってもらえる手段を考えること、

つまり自分のすべきことを考えることなのですが、

私のところに話が来る頃には現実ではないストーリーなので、

私はストーリーの中に埋まって隠れている現実を掘り起こすのに疲れます。

 

また、私自身も現実から離れたストーリーを作って、

そのストーリーを繰り返し考えることで苦しんだりします。

たとえば、

「あの人がいつも待ち合わせに遅れるのは私を馬鹿にしていて、

私の時間など取るに足らないものだと思っているに違いない」といった

考え」が浮かんできます。

相手が遅刻するたびにそのストーリーはどんどん現実味を帯びてきて、

私は「相手が私をバカにしている」という

「考え」に押しつぶされそうになります。

 

母も私も同じですね。

自分が作った「考え」によって自ら混乱に陥っている。

その考えは、相手の世界に入りこんで迷子になっている考えで、

実は相手はそこにはいません。

 

ケイティは、このように「自分のことから離れて

相手の世界(相手の考えていることを考える)」

に入り込んで困惑している人に対し、

「この世には3つの領域しかありません。

自分の領域、相手の領域、そして神の領域

(ケイティはこれを「現実」と言います)です」

そして、「変えられるのは自分の領域だけですよ」と、自分に立ち返るように、

様々な質問や言葉の置き換えを通じて導いていきます。

 

だから、例えば私は相手が遅刻することについて

「相手の領域に入り込んで考える」

必要はないわけです。

ただ現実があるのみ。

相手の「考え」を考えず、自分の領域にのみ集中する…

「待たずにすむやり方を工夫する」とか、

待ち時間を有効活用するとか、

一切、気にしないとか…

自分のあり方を変えると、

心が軽くなるのがわかります!

3. ワークが進むにつれて相談者は自分の領域に立ち返る

本書では、4つの質問の後にケイティの誘導による

言葉の置き換えを通じて

自分と「悩みのタネ」との関係性がさらに明らかになってきます。

本書の中の例を挙げると、

私の娘は薬物を使っている」を

私は薬物を使っている」と置き換えてみるのです。

実は、その「薬物」とは娘さんで、「娘さん」を心配するあまり、

相談者は自分を見失っている、ということが

この「言葉」の置き換えで明らかになります。

本書は、ケイティが公開で実施した実際の「ワーク」の事例を

いくつも紹介しています。

ワークの中で、相談者はケイティの質問に答えるたびに、

次から次へと自分の内にある現実に目覚め、

まるで幾層にも固まっていた「悩みの塊」の

硬い殻が、ポロリポロリと一枚ずつ剥がれ落ちていく様子が描写されています。

4. まとめ

この世の中には、どれほど「他人の領域」や「神の領域」に入り込んで

迷子になっている人が多いことでしょう。

私ももちろんその一人ですが、

 

本書を読み、「その考えは本当か?」というワークを思い出すだけで、

心を軽くすることができる気がしてきました。

「他人の考え」で「考える」のではなく

「自分の考え、領域に戻って」考えてみよう、と思えるようになったのです。

 

自分で作った「ストーリー」で頭がいっぱいになってしまう人は

少なからずいると思います。

「あの人は私を無視している」

「みんなが自分をバカにしている」

「私には●●の才能がない」…

そういった「考え」に苦しんでいる時、

自分に尋ねてみてください。

「その考えは本当であると絶対言い切れますか?」

なお、日本語でもワークは体験できるようです。

こちらのHPにワークショップの案内がありますのでご参照ください。

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この記事を書いた人

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大野 清美

1958年大阪生まれ、大阪育ち。子どもの頃の夢だった「留学したい」を37歳で実現。3児を育てながら米国NY州コロンビア大学国際関係学大学院を卒業しました。帰国後は英語を使って仕事を続け、今後は「自分の人生を変えてきた」英語を教えたい!と修行中です。
趣味はマラソンとモーターバイクでのツーリング(愛車Honda VTR)です。
(2019年4月記)