2015年から通い続けている、伊豆のヒポクラティック・サナトリウム。これまで「風になる」では、滞在するたびにその日々を記録してきました。今回は、それらをまとめる形で、施設の全体像、費用、1日の流れ、効果と限界、向いている人・向かない人について書いておきたいと思います。個別の滞在記を読む前の入り口として、あるいは、もう行こうか迷っている方の判断材料として使ってもらえたらと思います。
1. どんな施設か
初めてヒポクラティック・サナトリウムを訪れたのは、東京から伊東駅まで出て、そこからタクシーに乗った日でした。到着してまず目に入ったのは、「ユートピア」という文字が書かれた看板です。運営会社の名前(ヴィラージュ・アン・サンテ・ユートピア)からきているのですが、それを見た瞬間、「ここは本当にユートピアなのかもしれない」と、単純に思ったのを覚えています。
伊豆・伊東の高原にあるこの施設は、医学博士・石原結實先生が院長を務める断食施設です。「人参りんごジュース」による断食法の日本における提唱者として知られる石原先生が運営し、現在は娘である石原新菜先生も副院長として診察にあたっています。
施設としては温泉付きの宿泊施設で、全52室すべてが個室、Wi-Fiやテレビも完備されています。それだけ聞くとホテルのようですが、滞在の中心にあるのは「食べないこと」。1日3回、人参とりんごを絞ったジュースだけで過ごす日々です。滞在前には医師の診察を受け、体質や体調に合わせて断食プランを決めてもらえる点は病院に近く、部屋やアメニティ、温泉、周辺散策といった過ごし方の自由さは旅館に近い。ホテルでも病院でもない、その中間にある場所というのが、この施設の一番の特徴だと思います。
玄関を入るとフロントとロビーがあり、そこで断食のスケジュール表を渡されて受付を済ませます。ロビーではのんびり新聞を読んでいる人がいて、みんなそれぞれのペースで過ごしている、穏やかな雰囲気でした。
特に気に入ったのは温泉です。それほど大きな浴場ではありませんが、宿泊人数がもともと多くないので、混み合っている状態になったことは一度もありません。
滞在している人には比較的裕福な方が多く、近くにゴルフコースがあることもあって、ゴルフを楽しむ宿泊者もたくさんいました。私自身はゴルフをしないので、そこで交流できたらもっと違った時間になっただろうな、と少し残念に思ったこともあります。それでも、小旅行の誘いがあったりして、暇を持て余す時間はほとんどありませんでした。
2. 費用の目安
料金は宿泊する建物と部屋タイプによって幅があります(2026年7月時点)。もっともシンプルな本館のシングルルーム(相部屋なし、バス・トイレなし)で1泊17,000円程度から、新館の個室サウナ付き特別室になると1泊100,000円までと、選ぶ部屋によって大きく変わります。多くの人が選ぶ標準的なシングル・ツインルームは、1泊18,500円〜30,000円程度が目安です。ジュース代やプログラム参加費は基本的に宿泊費に含まれており、追加料金の案内はありません(ジオガイドツアーなど一部の予約制イベントのみ別料金)。
何泊するかは自由に選べ、1泊の体験滞在から9泊以上のしっかりした断食まで、目的に合わせて調整できます。
料金は変動するため、最新の金額は必ず公式サイトでご確認ください。
3. 1日の流れと食事
1日は、ジュースを中心に静かに進みます。私はランナーなので、朝一番にまず近隣に走りに行き(アップダウンの多い道です)、それから温泉に入り、そのあとで最初のジュースを飲むのが習慣でした。ジュースは1日3回、朝・昼・夕方に出されます(公式スケジュールでは8:00、12:00、17:45)。それ以外の時間は完全に自由で、私はブログを書いたり、勉強したり、本を読んだり、近くへ小旅行に出かけたりして過ごしました。
空腹について、正直に書いておきたいと思います。私自身は、空腹でたまらないという感覚をほとんど経験したことがありません。これはジュースの飲み方に理由があります。ジュースはコップに三杯ほどしっかり飲み、また、梅干しと黒砂糖は自由に食べられるのです。梅干しに黒砂糖をまぶして食べると、甘みと塩分の両方が補え、これが空腹感をかなり紛らせてくれました。実際、多くの宿泊者が同じように梅干しと黒砂糖を組み合わせて食べていて、黒砂糖と塩分でミネラルが補給され、ふらつき予防にもなっているようでした。
一日の中には他にも変化があります。10時にはお味噌汁の上澄み、15時には生姜湯やハーブティーが出され、ジュースだけが延々と続くわけではないので、飽きることもありませんでした。部屋にも生姜湯のポットが用意されていて、いつでも温かいものを飲めます。それでも小腹が空いたときは、紅茶に黒砂糖をたっぷり入れて飲むと、甘さで空腹感が紛れました。
これは1日目でも2日目でも変わらず、私にとって「お腹が空いてつらい」と感じた記憶はほとんどありません。ただ、これは個人差の大きい部分だと思います。空腹をより強く感じる方もいるはずなので、「断食=我慢の連続」というイメージとは違う、というくらいの温度で読んでもらえればと思います。
4. 効果と限界
体重については、もともとそれほど重い方ではなかったので、滞在を通じて劇的な変化があったわけではありません。一方で便通は別でした。ジュース生活を始める前はひどい便秘に悩まされていたのに、にんじんりんごジュースの生活を始めてからは驚くほど快適になったのです。肌や睡眠については、正直なところ自分でははっきりした変化を感じられませんでした。もともと睡眠の質には恵まれていた方だったので、そこに大きな違いはなかったというのが実感です。
数値や見た目以上に強かったのは、「体の中が一度浄化された」という感覚でした。客観的に説明しづらい、あくまで感覚的なものですが、滞在のたびにこのリセット感を求めて戻ってきているのは事実です。
ここで、同じ強さで書いておきたいことがあります。私がヒポクラティックサナトリウムを訪れたのは、抗がん剤治療を終えたあとでした。治療中は口内炎、食欲不振、強い疲労感に苦しむ日々を過ごし、それが終わったら自分の力で体を浄化したい、という思いでサナトリウムに向かいました。西洋医学を否定する気持ちは全くありません。サナトリウムの中で行われるのは、普段食べ過ぎているものを控え、体を休めることだけです。医療行為に類することは一切行われません。つまりここは治療の代わりになる場所ではなく、治療を終えたあとに心と体を整え直す場所だということを、はっきり書いておきたいと思います。
実際、現在のサナトリウムの予約条件には「現在、がんを患っている方は、ご宿泊をお受けできない場合がございます」という記載があります(2026年7月時点)。これは、この場所が治療の代替ではないということを、施設側もはっきり示している証だと思います。
5. 向いている人・向かない人
断食やジュースだけの生活が、体質や性格的に向かない人はもちろんいると思います。いくら体にいいと言われても、食べないことを我慢できない人には、無理に勧めることはできません。ただ、施設を運営する石原結實先生によれば、水だけの断食と違い、人参りんごジュースでの断食はほとんどの人が「ごまかさず」最後までやり切れるのだそうです。実際、常連の方も多く、その方たちは元気にゴルフを一日中楽しんでいました。当時の私よりも年上の方が、ジュースだけの生活でしっかりゴルフのラウンドを回っている姿には、本当に驚かされました。
友人にもこの施設を紹介したことがあります。友人たちは、(短期滞在だったので)滞在中はそれほど体重が落ちなかったものの、帰宅後に少しジュース生活を続けたところ、体重が大きく減り、便秘も解消されたと言っていました。また、滞在中も特に苦労することなく過ごせたそうです。
まとめると、向くのは「食べないことよりも、生活をリセットしたい気持ちの方が強い人」、向かないのは「食べないことそのものに強いストレスを感じる人」ということになりそうです。
6. これまでの滞在記を全部読みたい方へ
ここから先は、年ごとの滞在記へのリンク集です。初めての方は、写真や説明が丁寧になっている2020年の1日目からどうぞ。日々の変化を追いたい方は、2015年の初回から順番に読むと、回を重ねるごとに慣れていく様子がわかります。
2015年(初めての滞在・10泊)
2016年
2017年
2018年
2019年
2020年(おすすめの入り口)
[3日目]
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2021年
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